立徳ブログ おもしろい本とDVDの話

世界をよく理解して、自分の頭で考え行動するのに役立つ本とDVDを紹介します。そして、たまに時事評論も。 書名・作品名をクリックすると、さらに詳しい情報がわかります。

最新・北朝鮮データブック

今回は重村智計、最新・北朝鮮データブック―先軍政治、工作から核開発、ポスト金正日まで、2002年、講談社現代新書を紹介する。

  第1章 日本人拉致と工作国家の真実
 金日成(キム・イルソン)主席は1975年北ヴェトナムが南ヴェトナムを併合してヴェトナム統一を成し遂げたのを見て、同じように北朝鮮が韓国を併合する形で朝鮮統一が成功する可能性があると思い、韓国国内で革命を起こさせることに決めた。韓国で工作員が自由に活動するには工作員が日本人を装うのがよく、このため日本人を拉致して日本のパスポートを入手するとともに、拉致した日本人を工作員の教育に当たらせたのである。

  第2章 先軍政治とは何か
 1994年金日成が死去し、そのの後を継いだ金正日(キム・ジョンイル)は自分の意のままにならない労働党を信用していなかったので、1998年に憲法を改正して国防委員長に就任して、先軍政治を始動させた。先軍政治とは労働党に代わって軍が国家の柱になる政治体制であり、これ以後軍人が権力の中枢を占めることになった。

  第3章 ポスト金正日時代へ
 金正日国防委員長の後継者は長男の金正男(キム・ジョンナム)氏が有力だと見られていたが、2001年5月に同氏が成田空港で拘束されたことに金正日が激怒して金正男を後継者に指名することを見送った。金正日の心のうちは誰にもわからず、後継者が誰になるのかは今のところわからない。

  第4章 党と政府
 北朝鮮の政治指導体制は朝鮮半島で今なお影響力の強い儒教の伝統を巧妙に取り入れたものだ。北朝鮮では「首領」と呼ばれる唯一の指導者があらゆる国家機関および人民を「領導」する。「首領」という言葉を日本語の語感で解釈してはならない。「首領」は明治憲法下の天皇以上の存在ということになっている。したがって、「首領」による指導を特別に「領導」と表現するのである。人民は「首領」を実の親のように尊敬して無条件に従うこととされている。ここに儒教道徳の利用が見て取れる。そして、現在の「首領」が金正日国防委員長なのだ。

  第5章 主体経済の崩壊
 「自主性」を強調する主体経済体制の下で北朝鮮は深刻な経済的困難に陥った。この困難を解決するには中国・ヴェトナムのような改革・開放政策を取るしかないが、「改革」は金日成の経済政策を否定することを意味するので、北朝鮮では「改革」を唱えるのはタブーであり、困難から抜け出すのはきわめて難しい。

  第6章 北朝鮮国民の生活事情
 北朝鮮の国民には職業選択の自由・国内移動の自由・住宅を選ぶ自由はない。

  第7章 「振り子外交」と日朝関係のゆくえ
 北朝鮮外交の基本は「振り子外交」である。大国の間を振り子のように動いて大国から援助を引き出してきた。「振り子外交」は大国同士が対立しているときに有効なので北朝鮮はかつては中ソの対立を利用し、日米韓の連携を分断しようとした。

 2002年9月の日朝ピョンヤン宣言の日本文と朝鮮文を比較すると、ところどころにニュアンスの違いが見られる。

 (紹介者コメント)
 この本は北朝鮮を理解する際の基本書だといえる。この本を読んで疑問に思ったのはピョンヤン宣言に著者が指摘するような問題点があるのなら、日朝間の実際の合意内容は何だったのか、そして、そもそもピョンヤン宣言には法的拘束力があるのかということだ。この点について解明している研究があれば知りたいと思う。

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