立徳ブログ おもしろい本とDVDの話

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歴史とは何か

今回はE.H.カー、歴史とは何か、岩波新書、1962年(原著は1961年)を紹介する。

  1.歴史家と事実
 歴史は事実の客観的編纂ではなく、歴史家の心の主観的産物でもない。「歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話」(40頁)である。

  2.社会と個人
 「歴史家は個人であると同時に歴史および社会の産物」(61頁)である。現在と過去との対話は「抽象的な孤立した個人と個人との間の対話ではなく、今日の社会と昨日の社会との間の対話」(78頁)なのだ。「過去は、現在の光に照らして初めて私たちに理解出来るものでありますし、過去の光に照らして初めて私たちは現在をよく理解することが出来る」(同頁)。

 3.歴史と科学と道徳
 歴史的事実というものは、何らかの程度の解釈を前提とするものであり、歴史的解釈は常に道徳的判断(価値判断)を含むものである。しかし、歴史学と科学は「説明を求めるという根本の目的でも、また、問題を提出し、これに答えるという根本の手続でも同じ」(126頁)なのだ。

4.歴史における因果関係
 歴史家は、多数の因果の連鎖から歴史的に有意味なものだけを選んで歴史的現象を合理的に説明しようとする。歴史家が選ぶ合理的原因は、個別の現象から離れて一般化が可能で、何らかの教訓が得られるものである。

 5.進歩としての歴史
 歴史における判断の基準は「最も役に立つもの」である。そして、歴史における客観性というのは、「未来のうちに眠っていて、歴史のコースが進むにしたがって発展するところの基準にのみ基づくもの、基づき得るもの」(194頁)だ。「歴史が過去と未来との間に一貫した関係を打ち樹てる時にのみ、歴史は意味と客観性とを持つことになる」(同頁)。「歴史における進歩は、事実と価値との間の相互依存および相互作用を通して実現される」(196頁)。

 6.広がる地平線
 20世紀中葉の世界は深く激しい変化の過程にある。まず、理性の機能および力が新しい領域に広がり、「人間が自然を自分の目的に役立て、自分の環境を変えることが出来るという風に考え」、「人間が理性を意識的に働かせて自分の環境を変えるだけでなく、更に自分自身を変え始めている」(212-213頁)。次に、「今まで歴史の外にあったグループと階級、民族と大陸とが歴史の中へ現れて来た」(223頁)。

 (紹介者のコメント)
 この本でいう「歴史」は文明の誕生以後の時代のことである。現在を理解し、将来への展望を得るためには歴史を知らなければならないという著者の主張に賛成する。

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