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日中戦争への陰謀?

 「きっこのブログ」の9月22日の記事
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2006/09/post_fc3d.htmlには、まだ裏づけは取れていないが、これから2年以内に日本海側の都市にミサイルを着弾させ、京都か大阪で新幹線を爆破し、世論を誘導して、日本を戦時体制に移行させ、やがて中国と戦争するという陰謀があると書いてあった。

 はたしてこのような日中戦争に向けた陰謀というものが本当にあるのだろうか。「きっこのブログ」の記事はこのような陰謀が存在する根拠を3つ挙げている。それは9月11日付のアメリカの雑誌「Time」の「The Abe Enigma(安倍の謎)」という記事
http://www.time.com/time/asia/magazine/article/0,13673,501060918-1533514,00.html、去年10月東京のキャピトル東急で開かれた日米有識者による安全保障に関する会議、およびジョセフ・ナイが作成した戦略文書である。

 このうちあとの2つは内容を検討するのに時間がかかるので、今回は「Time」の記事についてふれる。

 この記事について、きっこはこう書いている。以下、引用。

 「そう言えば、9月15日の日記、「安倍ミコシを担ぐマスコミの茶番」の中で、アメリカの「タイム」に、安倍晋三の側近が「中国との戦争の準備」を示唆してるってことが書かれてるって紹介したけど、もうちょっと詳しく言うと、これは、9月11日付の「タイム」の「The Abe Enigma(安倍の謎)」って記事の中に書かれているもので、安倍晋三の側近ってのは、安倍の外交顧問の岡崎久彦(元駐タイ大使)のことだ。安倍とおんなじで戦争が大好きな岡崎久彦は、「安倍晋三が総理になれば、中国との関係はさらに悪化する」ってことを大前提として、「日本と中国とは、もう二度と1980年代のような友好関係には戻れるわけがない」「中国側もこういった現実を素直を受け止めるべきだ」って言い放ち、そして、「我々(日本)は中国との戦争の準備をすでに完了していなければならない」ってノタマッてる」。

 以上で引用終わり。それでは原文ではどうなっているのか。以下、引用。

 Will Abe tinker with Japan's constitution, and allow greater leeway for the country's Self-Defense Forces (SDF) to act abroad? "I'd like to draft a new constitution with my own hands," he told an LDP convention on Sept. 1, when he declared his candidacy for party president. He won't get the chance to do that; but Abe will almost certainly reinterpret the constitution in a way that allows the military to engage in collective self-defense actions with allies, a move Koizumi?no softie on defense?never pulled off, even while he dispatched Japanese forces to Iraq. Such changes are a way to further cement the country's all-important alliance with the U.S., and position Japan against the inevitable rise of China. In Abe's worldview the two countries have very different national values and are competing for resources and influence. Going back to the close relations of the 1980s is no longer realistic.
"[Reinterpretation] would make it clear that the balance of power will be between the U.S.-Japan alliance and China," says Hisahiko Okazaki, an arch-conservative and former diplomat who has become a foreign-policy adviser to Abe. "China has to deal with this reality. We have to be prepared for war."

 以上で引用終わり。この原文を読むと、きっこの紹介は正確なものではないことがわかる。まず、日本と中国が1980年代のような友好関係に戻れないと言っているのは岡崎氏ではない。この記事を書いたTimeの記者だ。原文では"Going back to the close relations of the 1980s is no longer realistic."

 次に、岡崎氏の言っている「こういった現実」というのは、集団的自衛権を行使できると日本国憲法を再解釈することになれば日米同盟と中国との間に勢力均衡が生じるということであって、安倍政権の誕生で日中関係が悪化するということではない。

 第三に、「我々(日本)は中国との戦争の準備をすでに完了していなければならない」というのは不正確な翻訳といわざるを得ない。"We have to be prepared for war"は「我々は戦争に備えができていなければならない」というのが正確な翻訳で、この発言だけで岡崎氏に好戦的な意図があるとは断言できないだろう。

 以上のことから考えて、「Time」の記事を陰謀存在の根拠にすることはできないと思う。

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