立徳ブログ おもしろい本とDVDの話

世界をよく理解して、自分の頭で考え行動するのに役立つ本とDVDを紹介します。そして、たまに時事評論も。 書名・作品名をクリックすると、さらに詳しい情報がわかります。

靖国神社の本

別冊宝島編集部編、ニッポン人なら読んでおきたい靖国神社の本、宝島社文庫、2006年

 この本は資料集としての性格が強いので、目次の掲載をもって要約に代え、その後に若干のコメントを付すことにする。

 第1章:靖国神社と日本政府
      小泉首相と靖国神社
      政府見解と靖国論争の変遷
      国会議員と靖国神社

 第2章:靖国神社の歴史
      靖国神社のはじまり
      靖国神社と皇室との関係
      戦後の靖国神社の復興
      靖国神社法案をめぐる経緯

 第3章:靖国神社と太平洋戦争
      靖国神社に祀られた266万人の「祭神」
      国が深く関与してきた靖国の合祀事務
      「靖国で会おう」と戦地に赴いた日本軍人
      靖国神社焼却も計画した占領軍当局
      A級戦犯問題をめぐる論争の発端

 第4章:靖国神社と国際関係
      なぜ中国・韓国は参拝に反対するのか?
      三木内閣以前の中国・韓国の反応とその後
      中曽根首相はなぜ参拝を取りやめたか?
      北朝鮮の反応
      靖国問題に対するアジアの反応
      靖国問題、私はこう見る 中国人の生の声
      靖国問題、私はこう見る 韓国人の生の声
      靖国神社を参拝した海外要人

 第5章:靖国神社とニッポン人
      「当然お参りすべきところ」戦争体験者世代が考える靖国
      「戦争という事実を伝えよ」戦中派〜団塊世代が考える靖国
      「インターネットの掲示板で興味を持った」新人類世代が考える靖国
      「ニュースで見るけど、なんにも気にしていない」携帯世代が考える靖国


 (紹介者コメント)
 靖国神社については特定の思想・立場から書かれた本はいろいろあるが、そのような思想・立場から離れて中立的な姿勢で読者に判断の材料を提供しようとする本は少ないだろう。本書はその数少ないもののうちの1つで、靖国神社について知ろうと思ったら、この本から読み始めるのがいいと思う。本書の第5章を読んで特に思ったのだが、誰かに教え込まれたことを無批判に信じていては説得力のある意見を表明することはできない。自ら主体的に学んで自分の頭で考えることが大事であろう。

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日本はなぜ敗れるのか

山本七平、日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条、角川oneテーマ21新書、2004年

 この本は、日本が太平洋戦争で敗れた原因について書かれた小松真一『虜人日記』(筑摩書房、1975年)を山本七平が自分の体験に言及しながら解説したものである(初出は1975〜76年の雑誌連載)。『虜人日記』では日本の敗因が21個挙げられている。各章のタイトルのすぐ後に続く「敗因」というのが小松氏の挙げた敗因であり、一行空けた後の記述は山本氏の解説の要約である。

  第1章 目撃者の記録
 小松真一は軍人ではなく、軍属の技術者として戦争を目撃した。日記の記述に当たって軍やその関係者に遠慮する必要はなかった。さらに、日記を書いていたときはフィリピンにあった米軍の労働キャンプにいたので、思想的な圧迫はなかった。また同じ原因から日本国内の情況を知らなかったので、国内の変化を先取りして過去を記すということはできなかった。以上のことから、小松氏の記録は信頼に値するものといえる。

  第2章 バシー海峡
 敗因:バシー海峡の損害と、戦意喪失。

 日本軍は台湾とフィリピンの間にあるバシー海峡を通じて兵員および物資をフィリピンに送ろうとしたが、制海権を握っていたアメリカ海軍に日本の輸送船は次々と沈められ、日本軍の目的が達成されることはなかった。日本軍は米海軍に対する有効な対策は格別講ぜずに、ただひたすら船を送り出すだけで、日々損害が増えていき、兵士の戦意が喪失していくという結果を招いた。

 日本軍は「ただある一方法を一方向に、極限まで繰り返し、その繰り返しのための損害の量と、その損害を克服するため投じつづけた量と、それを投ずるため払った犠牲に自己満足し、それで力を出しきったとして自己を正当化している」(68頁)だけであった。

  第3章 実数と員数
 敗因:精兵主義の軍隊に精兵がいなかった事。然(しか)るに作戦その他で兵に要求される事は、総て精兵でなければできない仕事ばかりだった。武器も与えずに。米国は物量に物言わせ、未訓練兵でもできる作戦をやってきた。

 日本軍では実際の数(実数)よりも多い兵士の数(員数)を前提に実行不可能な命令が出されていた。誰も実数と書類上の員数との差を指摘することはできず、そのようなことをする者は忠誠心がないといわんばかりの雰囲気が日本軍を支配していた。

  第4章:暴力と秩序
 敗因:日本文化の確立なき為。
 思想的に徹底したものがなかった事。

 日本人の捕虜収容所ではある種の暴力団が形成され、暴力と暴力への恐怖が秩序を維持していた。こうなったのは、日本軍の将校が学歴と社会階層だけで、いわれなきプライドをもっていて、兵士はこのような将校に反感を抱いており、将校が兵士を従わせるには暴力を用いるしかなかったからである。組織というものに関わりなく自然と秩序を生み出すような文化というものを日本人は職人を除けば確立していなかったので、このような状況を招来したと考えられる。

  第5章:自己の絶対化と反日感情
 敗因:日本文化に普遍性なき為。
 一人よがりで同情心が無い事。

 日本軍は占領した地域の住民を自己とは違った文化を持っているとは認識せず、また自分と住民を対等な立場に置いてコミュニケーションをとろうともしなかった。このような態度が地域住民に反日感情を発生させ、占領統治はうまくいかなかった。

  第6章:厭戦と対立
 敗因:国民が戦いに厭(あ)きていた。
 陸海軍の不協力。

 既に太平洋戦争が始まる前の時点で、1937年の日華事変勃発から続いている戦いに国民は厭きていた。この厭戦気分は実は軍部の中にもあって様々なイベントでこれをごまかしているだけだった。しかも、この軍部は当初からセクト主義のために陸軍と海軍の間だけでなく、陸軍内部および海軍内部の組織間の協力もうまくいかない有様だった。

  第7章:「芸」の絶対化と量
 敗因:精兵主義の軍隊に精兵がいなかった事。然(しか)るに作戦その他で兵に要求される事は、総て精兵でなければできない仕事ばかりだった。武器も与えずに。米国は物量に物言わせ、未訓練兵でもできる作戦をやってきた。
 将兵の素質低下(精兵は満州、支那事変と緒戦で大部分は死んでしまった)。
 物量、物資、資源、総て米国に比べ問題にならなかった。

 日本軍は兵士に特殊な状況下でしか通用せず、長期の訓練が必要な「芸」を習得させることにこだわった。

  第8章:反省
 敗因:反省力なき事。
 兵器の劣悪を自覚し、負け癖がついた事。

 日本軍は西南戦争の西郷軍と同じことを繰り返して敗北している。

  第9章:生物としての人間
 敗因:指導者に生物学的常識がなかった事。
 日本は人命を粗末にし、米国は大切にした。

 日本の兵士は上の命令を聞いたら自分の命はないと気付き面従腹背の態度をとるようになり、日本軍の組織は実質的に崩壊していった。

  第10章:思想的不徹底
 敗因:思想的に徹底したものがなかった事。
 精神的に弱かった(一枚看板の大和魂も戦い不利となるとさっぱり威力なし)。
 基礎科学の研究をしなかった事。
 日本の学問は実用化せず、米国の学問は実用化する。
 電波兵器の劣等(物理学貧弱)(この敗因については紹介者がここに位置づけた)。

 徹底的に考え抜くことをしない思想的不徹底さは精神的な弱さとなる。思想的不徹底さは基盤のない妄想が「思想」のように振舞うことを許し、基礎科学への関心を失わせた。基礎科学がいい加減なので、学問は日本の現実に即して実用化されることがない。

  第11章:不合理性と合理性
 敗因:日本の不合理性、米国の合理性。
 個人としての修養をしていない事。
 克己心の欠如(この敗因については紹介者がここに位置づけた)。

 日本軍の組織はそもそも日本人の伝統や常識から遊離した不合理なものだった。また日本兵は米兵に比べて教育の程度は高かったが、教養いいかえれば個人の生活に対する信念という面では米兵のほうが日本兵よりも優れていた。

  第12章:自由とは何を意味するのか
 明治以降日本では日常性(現実)に依拠した思考体系が成り立たず、日本人は虚構に支配されてきた。第二次世界大戦後の日本では戦後民主主義思想に基づく「再構成された過去の虚像」に日本人は支配されている。こういう意味で、「日本にはまだ自由はない」(311−2頁)。

 (紹介者コメント)
 正直いってこの本を読み終えるのは大変だった。この本に書かれていることはあまりに深刻で悲惨なものであり、読んでいると気分が落ち込んでしまうのだ。小松氏と山本氏が指摘した日本の問題点はいまだ解決されていない。恐ろしいことだ。

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現代イスラムの潮流

宮田律、現代イスラムの潮流、2001年、集英社新書

  第1章 イスラムとは何か
 この章では、イスラム教の概要とアラブ・イラン・トルコの歴史の概略が書かれている。

 イスラム教は、六信に基づき、五行を行うとされている。六信とは、神(アッラー)天使、啓典(コーラン、『旧約聖書』のモーセ五書および詩篇、『新約聖書』の四福音書)、預言者(アダム、ノア、アブラハム、モーセ、ダヴィデ、イエス、ムハンマドなど)、最後の審判の日、神の予定を信じることである。

 五行とは、信仰告白(「アッラーの他に神はいない。ムハンマドはその使徒である」と唱える)、礼拝(1日に5回、日の出、正午、午後、日の入り、夜に聖地メッカの方角に向かって行い、金曜の正午は集団礼拝となる)、断食(1年のうちでラマダーンと呼ばれる月の日の出から日の入りまでの時間帯に行う)、喜捨(収入の2.5%を貧しい人々のために与える)、巡礼(一生に一度メッカに赴くことが望ましいとされている)である。

  第2章 イスラムの宗派と、民族の融和と抗争
 イスラム教にはスンナ派とシーア派という宗派がある。スンナ派は預言者ムハンマドに続く4人のカリフ(イスラム共同体の最高指導者)とその後のイスラム王朝を、イスラム共同体の正統な指導者と見なし、預言者のスンナ(慣行)に最上の価値を認める。これに対して、シーア派はムハンマドの娘婿アリーとその子孫のみを正統な指導者と見なす。シーアとはアラビア語で党派という意味で、シーア派は当初アリーの党派「シーア・アリー」と呼ばれていた。

 イスラム世界ではスンナ派が圧倒的多数(信者の9割)を占め、シーア派はイラン以外では少数派なので、各地で様々な差別を受けてきた。これが現在の宗派間の対立・抗争の原因になっている。

 イスラム世界では長い間他の宗教とはうまく共存し、民族間の対立もなかったが、近代に入り西欧のナショナリズムが導入されてから、宗教や民族の間で対立や抗争が発生して、現在に至っている。

  第3章 成長する[イスラム原理主義]とは何か
 まず、「イスラム原理主義」という用語は武力を用いる一部の過激な集団の行動がこの運動全体の特徴のような印象を与えるので、「イスラム政治運動」という表現を使ったほうがいい。

 「イスラム政治運動」は政治・社会の中心にイスラムを据えようとする運動で、イスラム法に基づくイスラム国家の樹立を求めている。運動家たちはイスラム法が守られることによって社会のあらゆる問題が解決されると考えているのである。

 「イスラム政治運動」の組織は国家に代わって教育・社会福祉事業を積極的に行うことによって、支持者を増やし勢力を拡大している。

  第4章 パレスチナ問題
 第一次世界大戦後パレスチナでユダヤ人とアラブ系パレスチナ人とが対立するようになり、4回の中東戦争(1948〜49、56、67、73年)およびレバノン戦争(1982年)を経て、1980年代末にイスラエルの占領地(ヨルダン川西岸およびガザ地区)でパレスチナ人によるインティファーダ(蜂起)が起こる。1990年代になってイスラエルとパレスチナ人との間で和平プロセスが始まったが、21世紀になってこのプロセスは危機に瀕している。

  第5章 現代の[ジハード]をスケッチする
 本来「ジハード」とはムスリム(イスラム教徒)の強い努力を伴う行動という意味であり、戦争と同義ではない。「イスラム政治運動」で主流となっている「ジハード」とは教育・社会福祉事業を通じたイスラムの教えの普及である。

  第6章 イスラムとの共存・共生を考える
 イスラム世界では欧米モデルによる近代化が失敗して、イスラムの伝統的価値観に基づく改革運動が多くの人々の支持を得るようになった。
 イスラムを理解せずして、イスラムとの共存・共生はあり得ない。

 (紹介者コメント)
 この本はイスラム世界の入門書としてはよくまとまっていて手頃なものだといえる。ただ、出版されたのが2001年9月11日より前なので、最新の動向はわからない。それから、第4章の記述だけではパレスチナ問題を十分に理解することはできないように思われる。イスラエル建国以後については詳しい記述があるが、建国前の部分が簡単すぎて、ユダヤ人とアラブ人が対立するようになった原因がわかりにくい。この2点についてはほかの本で補う必要がある。

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最新・北朝鮮データブック

今回は重村智計、最新・北朝鮮データブック―先軍政治、工作から核開発、ポスト金正日まで、2002年、講談社現代新書を紹介する。

  第1章 日本人拉致と工作国家の真実
 金日成(キム・イルソン)主席は1975年北ヴェトナムが南ヴェトナムを併合してヴェトナム統一を成し遂げたのを見て、同じように北朝鮮が韓国を併合する形で朝鮮統一が成功する可能性があると思い、韓国国内で革命を起こさせることに決めた。韓国で工作員が自由に活動するには工作員が日本人を装うのがよく、このため日本人を拉致して日本のパスポートを入手するとともに、拉致した日本人を工作員の教育に当たらせたのである。

  第2章 先軍政治とは何か
 1994年金日成が死去し、そのの後を継いだ金正日(キム・ジョンイル)は自分の意のままにならない労働党を信用していなかったので、1998年に憲法を改正して国防委員長に就任して、先軍政治を始動させた。先軍政治とは労働党に代わって軍が国家の柱になる政治体制であり、これ以後軍人が権力の中枢を占めることになった。

  第3章 ポスト金正日時代へ
 金正日国防委員長の後継者は長男の金正男(キム・ジョンナム)氏が有力だと見られていたが、2001年5月に同氏が成田空港で拘束されたことに金正日が激怒して金正男を後継者に指名することを見送った。金正日の心のうちは誰にもわからず、後継者が誰になるのかは今のところわからない。

  第4章 党と政府
 北朝鮮の政治指導体制は朝鮮半島で今なお影響力の強い儒教の伝統を巧妙に取り入れたものだ。北朝鮮では「首領」と呼ばれる唯一の指導者があらゆる国家機関および人民を「領導」する。「首領」という言葉を日本語の語感で解釈してはならない。「首領」は明治憲法下の天皇以上の存在ということになっている。したがって、「首領」による指導を特別に「領導」と表現するのである。人民は「首領」を実の親のように尊敬して無条件に従うこととされている。ここに儒教道徳の利用が見て取れる。そして、現在の「首領」が金正日国防委員長なのだ。

  第5章 主体経済の崩壊
 「自主性」を強調する主体経済体制の下で北朝鮮は深刻な経済的困難に陥った。この困難を解決するには中国・ヴェトナムのような改革・開放政策を取るしかないが、「改革」は金日成の経済政策を否定することを意味するので、北朝鮮では「改革」を唱えるのはタブーであり、困難から抜け出すのはきわめて難しい。

  第6章 北朝鮮国民の生活事情
 北朝鮮の国民には職業選択の自由・国内移動の自由・住宅を選ぶ自由はない。

  第7章 「振り子外交」と日朝関係のゆくえ
 北朝鮮外交の基本は「振り子外交」である。大国の間を振り子のように動いて大国から援助を引き出してきた。「振り子外交」は大国同士が対立しているときに有効なので北朝鮮はかつては中ソの対立を利用し、日米韓の連携を分断しようとした。

 2002年9月の日朝ピョンヤン宣言の日本文と朝鮮文を比較すると、ところどころにニュアンスの違いが見られる。

 (紹介者コメント)
 この本は北朝鮮を理解する際の基本書だといえる。この本を読んで疑問に思ったのはピョンヤン宣言に著者が指摘するような問題点があるのなら、日朝間の実際の合意内容は何だったのか、そして、そもそもピョンヤン宣言には法的拘束力があるのかということだ。この点について解明している研究があれば知りたいと思う。

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アメリカ時代の終わり

チャールズ・カプチャン、アメリカ時代の終わり〈上〉 およびアメリカ時代の終わり〈下〉、2003年(原著は2002年)、日本放送出版協会(NHKブックス)を紹介する。

  第1章 グランド・ストラテジーはなぜ必要か
 大国が適切なグランド・ストラテジー、すなわち自国が世界の中でどのような方向に進んでいくかを定める戦略を持てば、国際システム全体が安定する。したがって、アメリカはグランド・ストラテジーを持つ必要があるが、いまだにアメリカ政府は冷戦終結後の新しい国際情勢に対応したグランド・ストラテジーを持っていない。

  第2章 アメリカの新しい世界地図
 新しいグランド・ストラテジーを構築するには、新しい世界地図、すなわち新しい国際情勢を正しく認識する枠組みが必要だ。そして、この世界地図についてはパワーの分布に基づいたものが最も適当である。

  第3章 グローバリゼーションと民主主義
 グローバリゼーションと民主主義が平和を促進するという議論があるが、このような議論は一面的だ。グローバル化した経済は、繁栄と同様に困窮をも簡単に伝播させ、経済的な苦境は、国内政治と国際政治の双方に恐ろしい影響をもたらしうる。一方、民主主義の基盤にはナショナリズムがあり、ナショナリズムは他国との競争関係を激化させるおそれがあるのである。

  第4章 ヨーロッパの勃興
 19世紀半ばに成立したドイツ帝国と古代の東西ローマ帝国のように、新しい勢力が勃興したり、1つの勢力が分裂したりして、国際システムが一極から双極または多極に移行すると大国同士が深刻な対立関係に陥った歴史がある。アメリカとEUも将来このような関係になるおそれがある。

  第5章 アメリカの本質
 建国以来のアメリカの歴史を振り返ると、アメリカがリベラルで積極的な国際主義という立場にあったのは第二次世界大戦以後の例外的な現象である。

  第6章 世界からのアメリカの撤退
 現在のアメリカの外交政策では孤立主義と単独行動主義の傾向が強く、この傾向は将来ますます強まっていくだろう。そして、アメリカは本土の防衛を最優先して、国際的な関与を減らしていく可能性が高い。

  第7章 パックス・アメリカーナの後
 アメリカ合衆国の連邦制度の発達、19世紀前半のヨーロッパ協調、第2次世界大戦後のヨーロッパ統合の例から考えて、国際システムを安定させ国家間の関係を平和なものにするには、戦略的抑制の行使、拘束力のある諸制度の確立、社会的統合の追求が必要である。

 まず、「戦略的抑制の行使とは、他者のために力を制御し、譲歩することである」( 172頁)。アメリカはヨーロッパの自立と東アジアの地域統合を歓迎すべきだ。

 次に、拘束力のある制度は戦略的抑制を実行に移すための中核的な手段である。「アメリカは自身の優位を頼みに孤立するのではなく、反対に間もなく依存せざるをえなくなる制度の方向づけに自身の影響力を行使すべきである」(220頁)。具体的には、アメリカ、EU、ロシア、中国、日本、およびインド、ブラジルなどの各地域の主要国から構成されるグローバルな理事会を新たに設立して、世界の主要な勢力間の関係を管理する方向に向かうべきだ。

 第三に、「社会的統合とそれにともなう共通のアイデンティティとは、共同体構築と、戦略的な対立の解消を不可逆的にするという解決につながる」( 228頁)。社会的な交流および国際制度によって、世界の主要勢力の間で「共通の利害を有するだけでなく、共通の義務を有する」(231頁)という意識が深められることが必要だ。

  第8章 歴史の再生へ
 これまでの世界の歴史では支配的な生産様式が変化すると統治機構および統治機構に正統性を与える共同体アイデンティティ(図3では共同体IDと略称)も変化してきた。

 図3 歴史時代(244頁)

 遊牧民時代(紀元前8000年以前)
生産様式:狩猟採集、主要統治機構:移動集団、共同体ID:アニミズム

 初期農業時代(紀元前8000〜紀元前3000年)
生産様式:狩猟・園芸、主要統治機構:部族・首長制、共同体ID:自然崇拝

 農業時代(紀元前3000〜1700年)
生産様式:耕作、主要統治機構:王国または強圧的国家、共同体ID:体系化した宗教

 産業時代(1700〜2000年)
生産様式:産業資本主義、主要統治機構:民主主義、共同体ID:ナショナリズム

 デジタル時代(2000年〜)
生産様式:デジタル資本主義、主要統治機構:?、共同体ID:?

 21世紀から始まったデジタル資本主義は従来の産業資本主義の下で発達した民主主義と国民国家の根幹を危うくしつつある。デジタル時代に対応した新しい政治システムの構築に失敗すると、国内だけでなく国際政治においても混乱が生じるだろう。

 (紹介者コメント)
 この本は世界の将来を展望するためには必読のものといえる。ただ、著者は現時点ではデジタル時代に支配的な統治機構と共同体アイデンティティがどのようなものになるか予測することは困難だと書いている。この点は残念なところだ。

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歴史とは何か

今回はE.H.カー、歴史とは何か、岩波新書、1962年(原著は1961年)を紹介する。

  1.歴史家と事実
 歴史は事実の客観的編纂ではなく、歴史家の心の主観的産物でもない。「歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話」(40頁)である。

  2.社会と個人
 「歴史家は個人であると同時に歴史および社会の産物」(61頁)である。現在と過去との対話は「抽象的な孤立した個人と個人との間の対話ではなく、今日の社会と昨日の社会との間の対話」(78頁)なのだ。「過去は、現在の光に照らして初めて私たちに理解出来るものでありますし、過去の光に照らして初めて私たちは現在をよく理解することが出来る」(同頁)。

 3.歴史と科学と道徳
 歴史的事実というものは、何らかの程度の解釈を前提とするものであり、歴史的解釈は常に道徳的判断(価値判断)を含むものである。しかし、歴史学と科学は「説明を求めるという根本の目的でも、また、問題を提出し、これに答えるという根本の手続でも同じ」(126頁)なのだ。

4.歴史における因果関係
 歴史家は、多数の因果の連鎖から歴史的に有意味なものだけを選んで歴史的現象を合理的に説明しようとする。歴史家が選ぶ合理的原因は、個別の現象から離れて一般化が可能で、何らかの教訓が得られるものである。

 5.進歩としての歴史
 歴史における判断の基準は「最も役に立つもの」である。そして、歴史における客観性というのは、「未来のうちに眠っていて、歴史のコースが進むにしたがって発展するところの基準にのみ基づくもの、基づき得るもの」(194頁)だ。「歴史が過去と未来との間に一貫した関係を打ち樹てる時にのみ、歴史は意味と客観性とを持つことになる」(同頁)。「歴史における進歩は、事実と価値との間の相互依存および相互作用を通して実現される」(196頁)。

 6.広がる地平線
 20世紀中葉の世界は深く激しい変化の過程にある。まず、理性の機能および力が新しい領域に広がり、「人間が自然を自分の目的に役立て、自分の環境を変えることが出来るという風に考え」、「人間が理性を意識的に働かせて自分の環境を変えるだけでなく、更に自分自身を変え始めている」(212-213頁)。次に、「今まで歴史の外にあったグループと階級、民族と大陸とが歴史の中へ現れて来た」(223頁)。

 (紹介者のコメント)
 この本でいう「歴史」は文明の誕生以後の時代のことである。現在を理解し、将来への展望を得るためには歴史を知らなければならないという著者の主張に賛成する。

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考えることの科学

市川伸一、考えることの科学―推論の認知心理学への招待、中公新書、1997年を紹介する。

   第1部:人間は論理的に推論するか

  第1章:形式論理と日常的推論

 人間の日常的推論は「形式よりも内容に依存する」(同書14頁)。

  第2章:論理的推論の認知モデル
 「人間は、論理式を操作するような思考はおよそできず、視覚的なイメージをモデルとして操作しながら、さまざまな場合を吟味していくというやり方をとる」(同書39頁)。

 (紹介者による注釈)論理式は命題ともいい、判断を言語で表したもの。
(例)ホタルは昆虫である。

  第3章:帰納的推論−−一を聞いて、十を知って、三誤る
 推論には演繹(えんえき)と帰納という2つのタイプがある。「演繹とは、前提が真であれば結論も必ず真となるようなタイプの推論である」(同書42頁)。

 (紹介者による注釈)
 演繹の例:

  前提1:すべてのホタルは昆虫である。
  前提2:ゲンジボタルはホタルである。
  結論 :よって、ゲンジボタルは昆虫である。

 このように、「演繹では、結論で述べている内容は、実は前提の中に暗黙に含まれている」(同書42頁)。

 これに対して、帰納は演繹でない推論すべてのことである。
 帰納の例:
  前提1:メキシコ人のホセは、とても陽気な人だった。
  前提2:メキシコ人のカルロスも、とても陽気な人だった。
  結論 :メキシコ人はみんな陽気なのだ。

 この例のように、帰納的推論には前提と結論の間に論理的飛躍があり、前提が真だからといって結論が正しいとは限らない。陽気でないメキシコ人が1人でも実在すれば結論は間違っていることになる。そして、人間はこのような性質の帰納的推論をやることが多い。

   第2部:確率的な世界の推論

  第4章:確率・統計的な現象に対する理解と誤解
 確率については次のような誤解がある。まず、賭博者の錯誤。これは、コイン投げで何回か続けて表が出ると、次は裏が出やすくなると考える心理的現象をいう。理論上は、コインの裏が出る確率はコインを投げるたびごとにそれ以前の結果とは関係なく常に50%である。

 次に、標本の大きさの無視。標本とは調査のために取り出した集団のことで、小さい標本ほど調査結果が理論上の確率からずれる程度が大きくなる。この点を考慮に入れないのを標本の大きさの無視という。たとえば、大病院と小病院とを比較すると、小病院のほうが男の子の生まれる確率と女の子の生まれる確率との差が大きくなる。にもかかわらず、小病院での調査結果をもとに結論を出すと間違う。

 統計については次の2つの点に注意すべきである。

 統計調査の結果、父親の身長(X)が高いほど息子の身長(Y)が高いという傾向が見られる場合、XとYの間には相関があるという。注意すべきは、「相関関係から短絡的に因果関係を推測してはならない」(同書80頁)ということだ。Yの原因にはX以外のものもあり得るからだ。

 次に、統計的な現象においては「完全相関でない限り、予測値は必ず平均に近くなる」(同書84頁)という回帰効果があることを忘れてはならない。たとえば、大リーグで新人賞をとった野球選手は2年目には成績が悪くなることが多い。この現象は回帰効果の現れだと理解すれば格別不思議なことではない。

 (紹介者による注釈)
 完全相関は、Xを横軸、Yを縦軸にグラフを作成したら、右上がりまたは左上がりの直線をきれいに描ける場合のことをいう。完全相関は理論上の概念で、現実の世界ではまずあり得ないといっていい。

  第5章:ベイズの定理をめぐる難問・奇問
 日常的な推論では事前確率を無視する傾向がある。事前確率とはある現象に関する情報が得られる前の確率をいう。これに対して、情報が得られた後の確率は事後確率という。
 (例)サイコロを投げて目が1である確率は事前確率の場合6分の1、出た目が奇数だと知れば事後確率3分の1になる。

 (問題)ある町のタクシーの15%は青色、85%は緑色である。ある日、タクシーによるひき逃げ事件が起きた。1人の目撃者の証言によると、ひいたのは青色のタクシーだったという。ところが、事件現場は事件の発生時は暗かったこともあり、目撃者が色を見間違えた可能性もある。そこでこの目撃者がどのくらい正確にタクシーの色を認識できるかを同様の状況下でテストしたところ、80%の場合は正確に色を判断できるが、20%は間違うことがわかった。さて、目撃者の証言どおり青色のタクシーがひき逃げをした確率はどれくらいだろうか。

 この問題に対して80%と答えれば、事前確率を無視していることになる。正しい確率を計算するにはこの町のタクシーの色の割合を考慮に入れなければならない。そして、データから仮説の確からしさの程度を求める定式であるベイズの定理を用いれば正しい答えを導き出すことができる。式は次の通り。

 (目撃者が正しくタクシーの色を青だと判断する確率)
―――――――――――――――――――――――――――――
(目撃者が正しく青だと判断する確率)+(間違って青だと判断する確率)

これは次の式に等しい。

 (町のタクシーが青色である割合)×(目撃者が正確に色を判断する確率)
――――――――――――――――――――――――――――――
(目撃者が正しく青だと判断する確率)+(間違って青だと判断する確率)

(目撃者が間違って青だと判断する確率)を求める式は、
(町のタクシーが緑色である割合)×(目撃者が間違って色を判断する確率)
だから、

   0.15×0.8               0.12
 ――――――――――― = ―――――――――――― ≒ 0.41
   0.15×0.8+0.85×0.2       0.12+0.17

となり、
目撃者の証言どおり青色のタクシーがひき逃げをした確率は約41%である。

  第6章 確率・統計問題での推論のしくみと学習
 第4章と第5章で見たような確率・統計的な現象に対する誤った判断を防ぐには、円グラフを使って視覚化してから考えるとよい。

   第3部 推論を方向づける知識、感情、他者

  第7章 推論は知識に誘導される
 人間は物事の認識・記憶および問題解決の際スキーマと呼ばれる知識体系を利用して情報を処理する。このスキーマによって推論が誘導され、間違った結論が導き出される場合がある。

  第8章 因果関係を推論する
 因果関係に関する日常的な推論では因果スキーマが用いられる。因果スキーマは日常体験を通じて形成されるので、これだけに頼ると科学的には間違った推論がなされるおそれがある。

  第9章 自己の感情と他者の圧力
 人間は基本的に自分の自尊感情を満足させたいので、自分の意見が多くの人に支持されていると思う傾向が強い。また、「自分の考えに合っていることや、自分に都合のよいことに向かって積極的に情報収集し、都合の悪いことは直視したがらないもの」(同書170頁)だ。「ところが、一方では、人間は自分の考えや判断が他者と一致しているかどうかを絶えず気にかけている」(同書 174頁)。さらに、話をしているときは、話の内容だけでなく、話をしている自分が相手にどのように受け取られるかを気にする。

 以上、日常的な推論における様々な問題点を見てきたが、このように人間の思考にはゆがみが生じがちだということを知ってはじめて、我々人間はよりよい思考ができるようになるのである。

 (紹介者のコメント)
 この本は第2部がやや難しいと感じられるかもしれないが、説明は丁寧なので読めば内容は十分理解できると思う。論理的思考ができるようになるためには、この本を読むだけでは足りないだろう。

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宇宙人としての生き方

 人間はどのような環境に置かれているかを知る本として、松井孝典、宇宙人としての生き方―アストロバイオロジーへの招待、岩波新書、2003年を紹介する。

  第1章 現代とはどのような時代か−−宇宙人としての視点をもつ−−
 地球は、大気・海洋・大陸・生物圏・人間圏などから構成される1つのシステムである。そして、現代は「地球システムの中に新しく人間圏が出現し、地球システムの構成要素が変わった」(同書6頁)時代だ。

  第2章 地球とはどのような星か−−地球をシステムとして見る−−
 システムの特徴はシステムの「構成要素が互いに関係性を持って相互作用を及ぼしている」(同書32頁)ことである。地球システムの構成要素には、磁気圏・プラズマ圏・大気圏・海洋・大陸地殻・生物圏・人間圏・海洋地殻・上部マントル・下部マントル・外核・内核がある。これらの構成要素の間で物質やエネルギーの出入りがある。そして、この出入りの駆動力となっているのが、「地球の外側にある太陽からの放射エネルギーと、地球の内部にある熱」(同書38頁)だ。

  第3章 文明とはなにか−−人間圏をつくって生きる−−
 約1万年前に、気候が安定化し農耕牧畜にとって良好な環境になった。一方、生殖年齢を過ぎたメス(おばあさん)が生き延びることで現生人類のメスの出産と子育てが比較的楽になった結果、人口が増加した。さらに、現生人類には言語を明瞭に話す能力があるので、「共同幻想」を抱くことができる。これら3つの要因により、人類は農耕牧畜を開始して、生物圏から独立した人間圏を形成するようになった。

 人間圏の発達段階には2つの段階がある。まず、「地球システムの、もともとの物質・エネルギーの流れ(フロー)を利用するだけ」(同書69頁)の段階であるフロー依存型の農業文明の段階。次に、人類が「人間圏の内部に駆動力を獲得し、それによって地球システムの物質・エネルギーの流れが誘起され、したがって地球システムに影響を及ぼすような」(同書70頁)ストック依存型の工業文明の段階。産業革命以後、化石燃料のようなそれまで地球にストックされていた物質が人間圏の駆動力として利用されている。

 第4章 我々とはなにか−−地球学的人間論へ−−
 我々現生人類は言語を明瞭に話すことができるので、自分の経験を他の人に伝えることができる。経験を共有する能力、いいかえればイメージを共有する能力は多くの人間の間で抽象的な概念を共有することも可能にする。このような抽象的概念を「共同幻想」という。現生人類はこの「共同幻想」(宗教はこの1例)に基づいて共同体を形成している。

 第5章 我々はどこから来たのか−−生命の起源と進化−−
 地球は今からおよそ40億3000万年前に誕生し、地球上には38億年くらい前から生命が存在する。
 生命の材料物質は宇宙から隕石に乗ってやってきた可能性があるが、「細胞レベルの生命になると原始地球で生まれたというのが一般的な考え方」(同書119頁)である。地球が誕生した時から海は存在していて、この海で生命が誕生した。

 生命の材料物質はタンパク質と核酸である。タンパク質を構成している単位のアミノ酸、および核酸を構成している単位のヌクレオチドのそのまた基本的な分子である核酸塩基が、どのようにして形成されるかという点については研究が進んでいる。

 これに対して、タンパク質と核酸がどのようにして細胞という構造を形成するのかという点についての研究はほとんど進展がない。

 生物は細胞の内部に核を持たない単細胞生物から細胞内部に核を持つ多細胞生物へと変化し、環境に適応して進化してきた。

 第6章 我々は宇宙で孤独な存在か−−地球外知的生命体の可能性−−
 太陽系の中で地球以外に生命が存在する可能性のある天体は、火星、木星の衛星エウロパ、土星の衛星タイタンの3つである。この3つには海が存在する、またはかつて存在していたという共通点があるが、今のところ生物は発見されていない。

 太陽系の外については、現在の観測技術では地球のような惑星を見つけるのは困難だ。

 第7章 歴史とはなにか−−宇宙・地球・生命・人類のスケールで考える−−
 150億年前に始まった宇宙の歴史は、均質な状態から異質なものが生まれてきた過程といえる。いいかえれば、宇宙も地球も生命もこれまで分化という方向に進んできた。そして、これは将来も変わらないだろう。

 第8章 我々はどこへ行くのか−−人間圏の現状と未来−−
 人間圏の拡大率と地球の成長率を比較すると、人間圏の1年が地球の1万年に相当する。そして、「1年間に人間圏に流入する物質の移動量は、地球システムの物の流れに換算すると10万年分くらいの移動量に相当」(同書189頁)する。つまり、地球システムの物の移動率で考えれば、人間圏の1万年の歴史は地球10億年の歴史に相当する。したがって、人間圏は既に地球システム全体の物とエネルギーの流れを変えるには十分な程度に長く存在しているといえる。

 一方、インターネットの発達により、従来共同体を構成要素としていた人間圏が次第に個人を構成要素にしようとしている。ところが、個人、いいかえれば個体としての人間はこれ以上分けることのできない究極の構成要素である。究極の構成要素によって構成されるシステムというものはビッグバンの時の宇宙と同じような状態で、混沌と無秩序の状態だ。このような状態は分化という歴史の趨勢に反する。

 個人と人間圏全体との中間に様々な階層レベルの共同体を構成要素とし、文明の寿命を伸ばす新たな「共同幻想」を生み出すのが人類の課題である。

(紹介者のコメント)
 この本は150億年の宇宙の歴史の中で人類がどういう存在なのかがよくわかる本である。ただ、人類が人間圏を形成したことをもって、現生人類は生き延びるために生きているのではないという結論を導き出しているところはやや説明が足りないように思われる。

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図解 フィンランド・メソッド入門

 知の基礎を身につける本として、北川達夫&フィンランド・メソッド普及会、図解 フィンランド・メソッド入門、経済界、2005年を紹介する。

 この本は現在世界から注目されているフィンランドの国語教育を次のような5つの能力を育成するものとして分析・紹介している。

 まず、発想力。マインド・マップを使った方法で語るべき内容を思いつく能力が育成される。

 次に、論理力。自分の意見を述べる際に必ず3つの理由を添えるというフォーマットを使った方法で根拠のある意見を述べる力が育成される。

 第三に、表現力。フォーマットを使って作文を書き、物語を創作することによって「自分のいいたいこと」を相手にわかりやすく提示する力が育成される。

 第四に、批判的思考力。作文を読んでその作文のよいところと悪いところをそれぞれ10個ずつ挙げたり、算数の文章題を読解したりする方法で、思い込みを避ける力が育成される。

 第五に、コミュニケーション力。班での議論を通じて、議論のルールに従い、相手のことを考えた言動をとる力が育成される。ちなみに、議論のルールとは次のとおり。
 1.他人の発言をさえぎらない。
 2.話すときは、だらだらとしゃべらない。
 3.話すときに、怒ったり泣いたりしない。
 4.分からないことがあったら、すぐに質問する。
 5.話を聞くときは、話している人の目を見る。
 6.話を聞くときは、ほかのことをしない。
 7.最後まで、きちんと話を聞く。
 8.議論が台無しになるようなことを言わない。
 9.どのような意見であっても間違いだと決めつけない。
 10.議論が終わったら、議論の内容の話はしない。

(紹介者のコメント)
 この本で紹介されているメソッドを用いれば確かに知の基礎のミニマムは身につくと思われる。だが、あくまでミニマムであって、大人はこれでは満足できないだろう。ミニマムを身につけたら、大学生・社会人向けの以下の本を読んで、次の段階に進んだほうがいいと思う。

  くろしお出版の「スタディ・スキルズ」習得シリーズ
 『知へのステップ』、『知のワークブック』、『プラクティカル・プレゼンテーション』

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